京都 町家の草木

山査子

さんざし
サンザシ【バラ科サンザシ属】 白く単の五弁花を房状につける山査子は、五月のなかばに丸く艶と張りのある直径1.5センチほどのしっかりとした青い実を付け、いずれ緋色に熟すと薬用に用いられる。整腸の作用があるらしい。
 花びらは桜のように軽やかながら、長く鋭い棘といい、実の成り様をみると、確かにバラ科であると合点がゆく。
 うっそうと茂り始めた裏庭は、取り囲まれたビルに取り付けられた室外機からの熱風がこもり、ますます蒸し暑くなりはじめた。
 山査子の横には、高く成長した棕櫚が3本。いかにも熱帯性の樹形を高々とのばし、先端に大きな扇状の葉を重ねている。しっかりとした葉の茎の根元には黄色い数の子みたいな花房が頭を下げてくっついている。甘たるい香りがどんより漂い始めると辺りはいっそうジャングルじみて、この一画が未知なる異国に思われてくる。
 山査子の深い青みがかった葉が水を掻き分けるオールのように、右に左に熱気を払っている先に、青々とした実が光るのを見ると、ふと、馴染みの土地に帰り着いたかのような安堵をおぼえる。
2009年5月30日 10:00 |コメント0
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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