コオニユリ【ユリ科ユリ属】
7月の庭に咲く花の色は朱。草木の葉の色は淡い黄緑から青みのある深い緑へと、いつしか移っていく。下草は、雨をたっぷりと吸い込んだ土から、あれよあれよという間にうっそうと茂り、梅雨時の重い空気を淀ませて時を止めているかのよう。そして、こんな日は山鳩のくぐもった柔らかい鳴き声が庭に響いている。
どんよりとした庭の草の間からは、1本の茎が空をはすかいに、頼りなげに伸びて。いずれ、その先には小鬼百合が咲き、あるか無きかの風にも頭を小さく頷かせる。
7月の庭に咲く花の色は朱。草木の葉の色は淡い黄緑から青みのある深い緑へと、いつしか移っていく。下草は、雨をたっぷりと吸い込んだ土から、あれよあれよという間にうっそうと茂り、梅雨時の重い空気を淀ませて時を止めているかのよう。そして、こんな日は山鳩のくぐもった柔らかい鳴き声が庭に響いている。
どんよりとした庭の草の間からは、1本の茎が空をはすかいに、頼りなげに伸びて。いずれ、その先には小鬼百合が咲き、あるか無きかの風にも頭を小さく頷かせる。
黒い斑点と、反っくり返った花びら。花の中から細くしなやかに伸びて空に消え入りそうな細い蘂(しべ)の先には、たっぷりと花粉を付けた葯(やく)がぶら下がっている。この雄しべがゆらゆら揺れるたび、手提灯がぶらぶら上下するように葯が振られるのだ。その反動で深く黒みを帯びた紅色の花粉が空に放たれ、あわよくば、その1つでも雌しべに落ちれば儲けもん。雌しべも準備万端、その時を待ち受けている。あまりにもすべてが巧妙に仕組まれた有機的形状と仕様。自然を受動するために、植物が能動的に獲得した生きる術のしたたかさ。
この花の咲いたのを庭に認めると、花の命の必然を考えないではいられなくなる。
この花の咲いたのを庭に認めると、花の命の必然を考えないではいられなくなる。