ある意味 サイレントキラー(静かなる殺人者)
閉塞性無呼吸症候群の場合は肥満の方に多いのですが、下顎(あご)の小さめの方の場合、肥満でなくても疾患を持っている場合があります。また扁桃(へんとう)肥大、鼻中隔湾曲などある場合も起こり得ます。他に増悪因子(疾患のある方がさらにひどくなる原因)としてアルコール摂取、喫煙や睡眠剤の使用などがあります。
この様に無呼吸症候群は、生活の質を低下させるだけでなく、重症度によっては生命にかかわる疾患です。早目の診断と必要な治療を早期に受ける事によりコントロール可能な疾患である事を理解して頂く事が必要です。
診断・治療に関しましては次稿にてお話しさせて頂きます。 (睡眠時無呼吸症候群(2)へつづく)
患者数約200万人
人間は人生のうち1/3は眠って過ごすと言われています。睡眠は重要な生理的現象であり生命活動を行う上で不可欠なもので、睡眠が十分に摂れないと身体的不調や精神疲労がたまり、日中に強い眠気や不注意が起こりやすく、業務上の失敗や事故につながる可能性があるのは周知の事実です。睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠障害の1つであり、1970年代より知られていましたが本邦では2003年の新幹線運転士の居眠り騒動から世間に知れ渡る様になりました。現在日本には人口の約1.7%、約200万人の患者さんがおられると推定されます(気管支喘息の罹患(りかん)率とほぼ同等)。男女比は9:1の割合で男性に多いですが、女性の場合閉経後増加すると言われています。今回は睡眠時無呼吸症候群の中で頻度の高い閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)についてのお話です。大いびき、日中の眠気
入眠中の強いいびき、起床時の頭痛、熟睡感の乏しさなどがあり、日中の強い眠気など感じる方がおられます。これは呼吸停止に伴う低酸素により中途覚醒(脳波上は非常に浅い眠りとなる)する事を繰り返す事によって良好な睡眠が得られず、日中に強い眠気を感じます。他に性格の変化、インポテンツなど来たす場合もあると考えられています。入眠中のいびき、無呼吸は自身では認識できない場合が多く、ご家族より入眠中の強いいびきと無呼吸を指摘されて心配になって受診される方がほとんどです。閉塞性無呼吸症候群の場合は肥満の方に多いのですが、下顎(あご)の小さめの方の場合、肥満でなくても疾患を持っている場合があります。また扁桃(へんとう)肥大、鼻中隔湾曲などある場合も起こり得ます。他に増悪因子(疾患のある方がさらにひどくなる原因)としてアルコール摂取、喫煙や睡眠剤の使用などがあります。
放置すれば命のリスク
単にいびきをかくとか仕事中にどうしようもなく眠くなってしまうとかだけならまだしも、生活上に様々な影響を与えます。仕事や学業の能率低下や事故の発生率が高くなり、統計では重症の無呼吸症候群の方の居眠り運転や交通事故発生率は正常群に比べて約2倍から7倍と言われています。その他には命にかかわる心臓血管系の病気(心筋梗塞、狭心症、脳卒中)のリスクが潜んでおり、睡眠時無呼吸症候群患者の約4割─6割程度に高血圧、高脂血症、耐糖能異常がみられると言われています。これは入眠中の呼吸停止で低酸素に陥る事により脳波上では眠りが非常に浅くなりアドレナリン分泌が増え、急な血圧の上昇がみられるためと言われます。特に早朝の血圧が高い方や血圧の薬を内服しているのに血圧のコントロールが悪い方に無呼吸症候群が存在する可能性があります。無呼吸から直接窒息、といった事は非常にまれですが、この急激な血圧の変化が心血管系に負担を与え、上記の様な心筋梗塞、脳卒中、不整脈を発症させやすくなり、これが直接の死因につながると考えられます。米国の調査では重症の睡眠時無呼吸症候群を放置しておくと9年後には10人中4人の方が心臓病、脳卒中、交通事故で亡くなっているというデータもあります。この様に無呼吸症候群は、生活の質を低下させるだけでなく、重症度によっては生命にかかわる疾患です。早目の診断と必要な治療を早期に受ける事によりコントロール可能な疾患である事を理解して頂く事が必要です。
診断・治療に関しましては次稿にてお話しさせて頂きます。 (睡眠時無呼吸症候群(2)へつづく)