医療+暮らし

百日咳(ひゃくにちぜき)(2)

ワクチン制度の改善を

 前回の記事を要約しますと、

  1. あかちゃんにとっては命取り
  2. 大人の流行が増加
  3. 大人は診断がつきにくい
  4. その大人からあかちゃんに伝染する

…ということになります。診断のつきにくい大人からあかちゃんに伝染し、そのあかちゃんは命の危険にさらされる。ではどうしたら良いのでしょうか。

百日咳の疫学

 こういう病気の統計はアメリカ合衆国がちゃんとしているので紹介します。1940年ごろには年間20万人の百日咳患者が発生し、4000人が死亡。ワクチンが普及した1980年代には患者数が年間2900人まで減少。その後、また増加して2004-2005年には、年間25000人の患者が報告されています。増えた患者さんは、思春期から成人が多いのですが、死亡した患者さん(年間20人前後)の90%は生後4カ月未満であり、乳児の百日咳の63%が入院を必要としています。

日本のワクチンの歴史

百日咳の患者、死者届出数の推移

百日咳の患者、死者届出数の推移(厚生省伝染病統計、人口動態統計による)

 1940年代には、年間10万人以上の患者さんが報告され、その10%が死亡していました。1950年から百日咳ワクチン(P)、1958年からはジフテリアとの混合ワクチン(DT)、1968年からは破傷風とあわせた三種混合ワクチン(DPT)が定期接種として行われ、1972年には百日咳は、年間200人あまりにまで激減しました。しかし、1970年代にワクチンの副作用が問題となり、一時中止されました。その結果、1979年には13000人の患者と20人以上の死者の届け出がありました。 その後、百日咳は伝染病予防法による届け出制から、医療機関での定点把握疾患に変更されたため、統計が十分には整っていません。1981年の改良型ワクチンによる再開後はかなり減少しましたが、最近はアメリカと同じく成人の患者さんが増えているようです。

大人にもワクチンを

 百日咳の流行は、早期発見や治療によって阻止することができません。日本では生後3カ月から3歳ごろまでに4回、DPTワクチンを打つことになっていますが、そこで得た抵抗力は、数年で弱まることがわかってきました。ワクチンが普及して流行が減ると、ブースター効果という抵抗力の自然の強化が生じなくなるのです。諸外国では、ワクチン制度の見直しが常に行われており、百日咳ワクチンも、アメリカでは4~6歳、11~12歳に追加接種を基本とし、大人も10年ごとくらいに接種することが勧められるようになりました。フランスなどでも思春期の百日咳ワクチンの接種が行われています。
 日本でも、成人に流行しはじめた麻疹(ましん)については、皆さんの応援もあって、制度の見直しが行われ、2005年からMR混合ワクチンとして追加接種が行われるようになりました。あかちゃんを守るためにも、生涯を見通したワクチン制度の再検討が求められています。
京都民医連中央病院 小児科 出島直
2009年9月28日 12:39 |コメント0

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