京都 町家の草木

糸芒

ススキ
イトススキ【イネ科ススキ属】  月に芒。いつの頃から、中秋の名月に芒の手招きが必要になったのだろう。本来なら秋の実りを供えていたはずだった。その名残は、白くて丸いお団子にみることができるけれど、これは主に関東の風習らしい。京都では、小芋。お団子も小芋に似せて円すい形で尻膨らに餡の衣をまとっている。お菓子司の手にかかれば小芋にそっくり似せた生菓子も作られて、お行儀良く菓子器に盛られたりする。中秋の月の芋名月とも呼ばれる所以。
 陰暦9月の十三夜の月は豆名月。豆が供えられることになっている。
 さわさわと渡る風は透きとおり、空は冴え冴えとして遠い。
学校から帰ると近くの公園で夕暮れまでよく遊んだ。近所の家から焼き魚のにおいや玉葱を炒める香りが漂うのが帰る時間の合図だった。みんな埃っぽくなっていたけれど、それぞれ太陽の香りを持ち帰っていた。
 西日を背にして歩く路。すらりとした足長の自分の影が先に歩いている。
「こんなスタイルに生まれたかったなあ」と、幾度あこがれたことか知れない。
「お母ちゃんも小さい頃、自分の影見て、どんだけ同じ事思うたことか知れへんえ」
やっぱり親子。
 今も夕暮れに路を歩いているときに、夕飯をこしらえている匂いがしてくると「もう、帰らないと」という気持ちになる。
「ただアいまア」
「おかえりイ」
2009年10月 2日 15:34 |コメント2
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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コメント

いつも出没して本当すみません。糸すすきは大好きな植物です。普通のすすきやのうてなにがしか哀れではかなげで。秋の色にピッタリです。歌子さんの植物紹介で色んな名前教わりました。有難う。

やまちゃん さん
 コメント、ありがとうございます。
気に入っていただけて、とっても嬉しいです。
また、ご感想など寄せていただけると嬉しいです。 
 

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