リュウノウギク【キク科キク属】 「茎や葉に含まれる揮発油の香りが龍脳に似ていることからこの名がある」と、図鑑に書かれてあるけれど、龍脳の香りを知らないからこの菊の香りが龍脳なのかと独り言つ。
庭の一角にある畑の手入れをする祖母の姿をよく見かけたのは、晩秋を前にした頃だった。
サクッ。サクッ。
肥えた土に鍬をいれる優しくて軽い音が耳に残っている。祖母は木箱に落ち葉を貯めていた。よく耕し終えた畑には枯れ葉を敷き、そして白い石灰も振り入れて慣れた鍬さばきで土をかぶせる。祖母は鋤も扱い慣れていて、雑草の生えた堅く締まった土だって、ふかふかに蘇らせていた。
庭の一角にある畑の手入れをする祖母の姿をよく見かけたのは、晩秋を前にした頃だった。
サクッ。サクッ。
肥えた土に鍬をいれる優しくて軽い音が耳に残っている。祖母は木箱に落ち葉を貯めていた。よく耕し終えた畑には枯れ葉を敷き、そして白い石灰も振り入れて慣れた鍬さばきで土をかぶせる。祖母は鋤も扱い慣れていて、雑草の生えた堅く締まった土だって、ふかふかに蘇らせていた。
祖母の傍らでは、内弁慶な孫と気まぐれな相棒犬マリが互いに意識し合いつつ、微妙な距離を保って土と戯れていたっけ。なんせ、マリ公は祖母が大好きだったから、孫の存在に焼き餅を焼いて厄介に感じていたのに違いなかった。今も私の腕には、幼少時にガブリと噛まれた歯形が残っている。うっかりマリ公の気持ちを逆撫でしてしまった結果だから自業自得。この傷も裏庭の思い出のひとつ。
木枯らしが吹く頃まで花を咲かせ続ける菊も、そろそろ見納めとなるのは師走になってから。祖母が枯れ始めた菊の枝を刈り始めると、胸のすく薬草のような香が放たれる。そこには干し草の日向の香も混じり、つるべ落としの秋の夕暮れに懐かしい思い出に明かりを灯す。それは、よく日に干した冬布団に顔を埋めるときに覚える安堵感にも似て、深い懐に抱かれた胸の奥底にぽっと温もりを覚えるような、かすかでいて確かな幸福の気持ちを誘う。
木枯らしが吹く頃まで花を咲かせ続ける菊も、そろそろ見納めとなるのは師走になってから。祖母が枯れ始めた菊の枝を刈り始めると、胸のすく薬草のような香が放たれる。そこには干し草の日向の香も混じり、つるべ落としの秋の夕暮れに懐かしい思い出に明かりを灯す。それは、よく日に干した冬布団に顔を埋めるときに覚える安堵感にも似て、深い懐に抱かれた胸の奥底にぽっと温もりを覚えるような、かすかでいて確かな幸福の気持ちを誘う。
こんばんは。子供の頃、よく母と菊まつりに出かけました。一本の菊から、何十もの花を咲かせているのが、とても不思議でした。歌子さんのお家に以前いた犬はマリちゃんという名だったのですか・・・。うちと同じ名前、偶然とはいえ嬉しいです。今も犬を飼っています、名はキララです。動物も大切な家族です。