京都 町家の草木

雄苅萱

雄刈萱
オガルカヤ【イネ科オガルカヤ属】  苅萱には雄と雌があって、それぞれに異なる特徴がある。
 庭に生えている雄苅萱の性質をみると、その繁殖力は温和(おとな)しく、勝手に生え広がることはない。毎年決まった場所に芽を吹いて1メートルほどに成長する。茎は針金のように細く、花房も目立たない。晩秋に刈り取るときなど、ちょっと酸味のあるような良い香りを放つ。
 一方の雌苅萱は、手元の牧野植物大図鑑によると1.5メートルの背丈になり、たいそう丈夫な茎を持つらしい。屋根を葺くのにも用いられる、とある。こちらの花房は長さ6センチほどの芒(ぼう)を出すというから、さぞ秋野にみだれる種々の草のなかにあっても目を惹くに違いない。
 庭の雄苅萱は、地面の敷石の間やコンクリートの割れ目など、せせこましい場所を好み、そこから束になって群生する。
 幼い頃、この庭先で姉妹3人と犬1匹、じゃれつきあってよく遊んだ。時には父も加わって相撲をとったりして過ごしたこの庭の景色のなかで、今も変わらないのは秋の雄苅萱のしゃらしゃらとした茂み。昔とちっともかわらず同じ場所に同じように生えている。いつ頃、家の誰が植えたのか定かではないが、父の若い頃には既に生えていた。細長い葉を涼しげになびかせる夏を過ぎる頃から、花房をつけた茎はぐんぐん伸びる。花房といっても稲科の植物だから目立たぬ地味な花房。秋には葉の幾筋かはところどころで照柿(てるかき)色になり、緩やかに弧を描く茎や花房は赤みのある紫の蘇芳(すおう)色へと移る。
 次第に秋は染まりゆく。
2009年11月 6日 17:19 |コメント4
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

京都 町家の草木の新着

コメント

こんばんは。先日そちらへ伺ったとき、お庭に向かった席にあったアルバムを見せていただきました。リュウノウギクまでありましたが、次のページには、オガルカヤが加わるのですね。地下鉄の駅まで一緒に帰った方も言ってましたが、絵や写真は勿論のこと、文章がまたいいんですよね~。心温まる思いです。

彩の国hirokoさん
 いつも応援有難うございます。
これからの時期に、いっそう心ほかほかしていただけると嬉しいです。

11/5 秋の特別一般公開の最終日にうかがった者です。

年に四回 所用で京都に行きます 
京都まで行くのだから 美術館を鑑賞することにしました。
直前に「京都で遊ぼう・・建物を味わうミュージアム」のサイトで、訪京の日が 杉本家住宅様の一般公開の最終日だと知ったのです。
幸運でした!!
四時過ぎに道に迷いながら飛び込んだ(静かに・・)私。
仏間では 講師の方のお話が始まっていました(美人です!)
お聞きしているうちに、この方が”ほっこり京都 町家の草木”の日本画家の歌子さんに違いないと、、コメントに書かれる視点がそう。確信しました。
 帰りには、見送っていただき、握手までしてもらいました。
そして、端午にゃんに遭えたのが一番嬉しかったりして~
夢のような、京都の夕暮れ時でした。

 間違っていたら申し訳ないのですが、前に書かれている「彩の国hiroko」様 地下鉄駅までご一緒していただいたのは、私だと思うのですが。
新幹線で帰るとおっしゃっていました。私は、近鉄特急に乗って帰ると言いました。
「また機会があったらお会いしましょう」と。こちらも忘れられない思い出となっています。

 今日は仕事が休みなので、のんびりと、ならや日記のアーカイブに長居させてもらいました。
夏みかんのマーマレード、作られるのですね>私も、ここ何年か 春になると作ります。
甘夏ではなく、激スッパの昔の夏みかんの方が、美味しくできると思いません?
りんごジャムなら、紅玉というように。
・・端午ちゃん>>”「焼き茄子」と呼び名が変わります。”
焼き茄子のタランとした形態と触感が彷彿と・・www
そして、♪クロネコのタンゴ タンゴ タンゴ 僕の恋人は黒い猫 ♪
当方の高校時代に流行った この歌を思い出しました。

こんばんは、てんとうさん。覚えています。地下鉄の駅で別れる際、あなたは、確か大丸に寄って行きます・・・と話していましたね。こちらでお遭いできるなんて、とても嬉しいです。またお遭いできることを、楽しみにしています。

コメントを投稿

コメントは、京都民報Web編集局が承認するまで表示されません。
承認作業は平日の10時から18時の営業時間帯に行います。




メールアドレスは公開されません



京都の集会・行事