庭に生えている雄苅萱の性質をみると、その繁殖力は温和(おとな)しく、勝手に生え広がることはない。毎年決まった場所に芽を吹いて1メートルほどに成長する。茎は針金のように細く、花房も目立たない。晩秋に刈り取るときなど、ちょっと酸味のあるような良い香りを放つ。
一方の雌苅萱は、手元の牧野植物大図鑑によると1.5メートルの背丈になり、たいそう丈夫な茎を持つらしい。屋根を葺くのにも用いられる、とある。こちらの花房は長さ6センチほどの芒(ぼう)を出すというから、さぞ秋野にみだれる種々の草のなかにあっても目を惹くに違いない。
幼い頃、この庭先で姉妹3人と犬1匹、じゃれつきあってよく遊んだ。時には父も加わって相撲をとったりして過ごしたこの庭の景色のなかで、今も変わらないのは秋の雄苅萱のしゃらしゃらとした茂み。昔とちっともかわらず同じ場所に同じように生えている。いつ頃、家の誰が植えたのか定かではないが、父の若い頃には既に生えていた。細長い葉を涼しげになびかせる夏を過ぎる頃から、花房をつけた茎はぐんぐん伸びる。花房といっても稲科の植物だから目立たぬ地味な花房。秋には葉の幾筋かはところどころで照柿(てるかき)色になり、緩やかに弧を描く茎や花房は赤みのある紫の蘇芳(すおう)色へと移る。
次第に秋は染まりゆく。
こんばんは。先日そちらへ伺ったとき、お庭に向かった席にあったアルバムを見せていただきました。リュウノウギクまでありましたが、次のページには、オガルカヤが加わるのですね。地下鉄の駅まで一緒に帰った方も言ってましたが、絵や写真は勿論のこと、文章がまたいいんですよね~。心温まる思いです。