クボガキ【カキノキ科】
お台所から北側に庭をのぞむ。
雄苅萱、藤袴、萩、ほととぎす、蓼、犬の子草といった秋草がざわざわと茂った庭先を仕切る板塀の向こう側から、その塀を越えて枝葉を覗かせるのは、くぼ柿の老木1本。この木は、重ねられてきた家族の日々をずっとそこから見続けてきた。何でも知っている。
お台所から北側に庭をのぞむ。
雄苅萱、藤袴、萩、ほととぎす、蓼、犬の子草といった秋草がざわざわと茂った庭先を仕切る板塀の向こう側から、その塀を越えて枝葉を覗かせるのは、くぼ柿の老木1本。この木は、重ねられてきた家族の日々をずっとそこから見続けてきた。何でも知っている。
木肌の皺は、かき餅のように深くひび割れ苔むして、すでに幹に張りはなく、やせ衰えているけれど、今年も実をいくつも着けた。色づき始めると、さまざまな野鳥がとっかえひっかえやって来る。甘いのも渋いのもあるなかで、上手に熟れた実だけを啄(ついば)んでは、ご機嫌よろしく囀(さえず)り交わしている。
さあ、我々家族もお相伴させていただきましょう。皮を剥くなり手が伸びて、頬張りながら口々に思い出ばなし。今と昔を行きつ戻りつ。
祖父は俳句をやっていた。俳号は「北柿(ほくし)」。この柿を想って自らを号した。
祖父は家業の「奈良屋」の経営のため、1年のほとんどを千葉市で過ごすことを余儀なくされていた。遠い京都にいる家族への思いを、この柿の木に託したのだろうと、孫のひとりは思っている。
まだ残る 柿の梢や 十三夜 北柿
さあ、我々家族もお相伴させていただきましょう。皮を剥くなり手が伸びて、頬張りながら口々に思い出ばなし。今と昔を行きつ戻りつ。
祖父は俳句をやっていた。俳号は「北柿(ほくし)」。この柿を想って自らを号した。
祖父は家業の「奈良屋」の経営のため、1年のほとんどを千葉市で過ごすことを余儀なくされていた。遠い京都にいる家族への思いを、この柿の木に託したのだろうと、孫のひとりは思っている。
まだ残る 柿の梢や 十三夜 北柿
おはようございます。我が家にも、3本程柿の木がありました。実が大きくて甘くて美味しかったけれど、今その場所は、駐車場になっています。柿は体を冷やすから、夜は食べないほうがいい、、、とお祖母ちゃんが言っていたことを思い出しました。