京都 町家の草木

浜ぼう

浜ぼう
ハマボウ【アオイ科フヨウ属】  落葉低木樹のはまぼうは高さ1~2メートル。楕円形の葉の色づく様子の美しいこと。緑色から黄色、朱色、栗色まで丸い形が枝を彩る。
 ひらりと清涼感溢れるうす黄色の一日花をいくつか咲かせてくれた蒸し暑い夏の庭はもう半年も前になったのか。その後結実し、ちょうど師走の頃になると2.5センチほどの実は弾けて小さな種を落とし始める。いくつかは弾けずにそのまま冬を越すのがあって、弱い朝日にうっすらと産毛を光らせる実に遠い日のことを見ている。
 植物にはその数だけの種の形があり、子孫を残すための戦略もまたその数だけある。庭の草木も互いに思案しながらしたたかに生存の道を探っている。落ち葉の掃除が欠かせないこの時期、せっせと箒を動かしながら足下をみると今しがた足を置いていたところに団栗(どんぐり)が埋まっている。なるほど土に埋まりやすい肌のキメと形を有している。柿は色づき甘くなることで多くの小鳥の気を引き舌を満足させながら樹元や遠くにまで種を運ばせる。一方同種で集落を作りたい植物の実はじつに地味で産毛に覆われていたり固い殻があったりする。自力で弾けて適度に離れた場所に子孫の芽吹きを心待ちにしている。浜ぼうもそうした植物のひとつ。ひとつの実のなかには沢山に小粒の種が入っていて、ぱらぱらと足下に落とすだけ。実生となる確率は低いけれど、毎年種を落とし続ける。希なる好条件のもと芽を出す種があればそれでよいのだ。
 今手にしているこの実をつけた木も実生だった。親株はもうかなり前になくなってしまっている。
2009年12月18日 12:23 |コメント3
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

京都 町家の草木の新着

コメント

初夏に咲く淡い黄色のハマボウの花、大好きです。
亡くなった戦友の鎮魂のために、ハマボウの苗を育て
あちこちに無料で配っている素敵な90歳近いおじいさんから
苗を2本頂き、毎年楽しんでいます。
 
 歌子さんの豊富な知識や素敵なスケッチに感じ入ったり
好きな草木が取り上げられると嬉しくなったりで次回は何かと
楽しみに拝見しています。

自宅で織物、染色をしています。京都町家の草木を毎週楽しみにしています。絵もすてきなので、切り抜いています。

この「草木」を楽しみにしてくださっている方々、また、こうしてコメントをくださった方々。ありがとうございます。
こうして、お気持ちを寄せてくださって心から感謝を申し上げます。
有難うございます。

コメントを投稿

コメントは、京都民報Web編集局が承認するまで表示されません。
承認作業は平日の10時から18時の営業時間帯に行います。




メールアドレスは公開されません



京都の集会・行事