京都 町家の草木

丸葉満作の花

マンサクの花
マンサク【マンサク科マンサク属】
一名「青樅(アオモミ)」
 満作は師走から年始にかけて、庭の景色がもっとも寂しい時期に縮れた黄色花を冬枯れの枝にたくさん付ける。マンサクは比較的新しい呼び名で、鷹取遜庵(たかとりそんあん)の『四季賞花集』(1805年)に表れるまで青樅(アオモミ)と呼ばれていた。その花の形状の特異なところから、庭に植えて珍重されてきた。
 マンサクの名の由来は「まず咲く」(小野蘭山説)からとも、枝いっぱいに花を付けるから豊年満作(牧野富太郎説)からだとも言われている。
 満作の花はとても変わっている。ひとつの花は赤褐色の4つの萼(がく)を持ち、そこから細い帯状の花弁を4枚伸ばす。開くというより伸ばすと言ったほうがこの花にはふさわしいように思われる。花弁はそれぞれ内に向かって紙テープのように丸まって収まっていて、萼が開き始めると寒さに震えでもしているかのように、一片ずつそろりと思い思いに緩めながら伸ばしてゆく。蕾はたいてい2つから4つでひと固まりになっていて、それらがいっせいに開花すると、枯れ枝に黄色いイソギンチャクがいくつもくっついているみたいに見えてくる。
 この細い帯状の花弁は意外なほどしっかりしていて、たとえ比叡おろしのような雪を呼ぶ北風に吹かれたとしても、ひらひらと吹き流しみたいに風になびくことはほとんどなく、嘘みたいに、まるで凍りついているかのように形をとどめて咲き続ける。
 こちらはタートルネックに首を仕舞い、冷えきった両手をポケットに深く沈めて、この辛抱づよい花に冬を忍ぶ底力をおぼえている。
2010年1月22日 16:27 |コメント2
絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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コメント

こんにちは。これは、昨年の夏、蝉の絵と共に紹介されていたマンサクの花ですね。私は以前、蠟梅と勘違いをしていました。早春に咲く花は、黄色が多いような気がしますが・・・なぜなのでしょう?!

 マンサクは、春に先駆けて「まず咲く」ことからの
命名だと思っていました。枝いっぱいに花をつける
「豊年満作」も豊かな」感じがしていいですね。
我が家のそれは、ツンツンに枝を切られて・・・
豊年満作に咲きそうにありません。

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