ハクバイ【バラ科サクラ属】
すっと伸びた緑の枝に丸い蕾がついている。ひとつ、ふたつと蕾がほころんで香るころ、鶯が初鳴きを始める。上手な年もあればへたくそな年もあって、毎年この春の渡りの善し悪しが家人の話題に上る。木々の小枝を敏捷(しょう)に渡る姿は、あの響き渡る鳴き声の主とは思えぬほど小さくほっそりとして、ひと時も同じ枝にとどまっていない。
この市中の山居に渡る鶯の歌は、ひと春ビルの谷間にこだまする。
この市中の山居に渡る鶯の歌は、ひと春ビルの谷間にこだまする。
昨年、白梅は実を9個つけた。初夏に収穫をして、和歌山の青梅も加えて100個ほど梅干しに漬けた。土用には朝から母と庭に出した床几にゴザを敷いて赤く染まった梅を並べた。太陽に照らされた梅はぷにょぷにょ、傍らの紫蘇はカリカリ。梅の表面には塩の結晶がキラキラと光って雲母をかけたように美しい。三日天日、一晩夜露にあてて仕上がった自家製の梅干しは太陽の香りがする。これは市販の梅では味わえないふくよかさを湛(たた)えている。鮮やかな赤みを増したまだ熱い梅をひとつ指につまんで口へ運ぶと、口の中はたちまちじわっと唾の海。涙が出るほど酸っぱい。
あの夏の記憶をとどめた梅干しは大事に保存瓶にしまわれて、冬に風邪をひいたときのお粥に添えられる。枕元に運んでもらった土鍋のお粥。蓋をあけると薄くらい部屋に湯気が白く柔らかく広がった。お箸の先に梅干しをつけてひと舐め。それから散り蓮華でお粥を口へ運んだ。
あの夏の記憶をとどめた梅干しは大事に保存瓶にしまわれて、冬に風邪をひいたときのお粥に添えられる。枕元に運んでもらった土鍋のお粥。蓋をあけると薄くらい部屋に湯気が白く柔らかく広がった。お箸の先に梅干しをつけてひと舐め。それから散り蓮華でお粥を口へ運んだ。
こんにちは。梅の花を見つけると、春を連れて来てくれたようで、嬉しくなります。古木だった庭の梅の木は、台風で倒れてしまい、今はありません。今年は、白梅を求めようと思います。