京都 町家の草木

椿

椿
ツバキ【ツバキ科ツバキ属】  椿は江戸時代に園芸品種の改良が盛んに繰り返されて様々な品種ができ、和名もそれぞれに付けられた。庭の椿は詳しく調べれば名前のハッキリと判ることもあろうが、幹に提げられていたはずの名札は幹が太くなるに従って糸が切れ失われてしまった。庭には様々な品種が植えられているので自然交配した実生の椿も多く、すでに雑種の椿が多いのではないかと思う。それでも特徴のある椿は名前もわかる。獅子頭、白玉、侘助など。
 古都に春を呼ぶ奈良の東大寺二月堂で執り行われる「修二会」(通称「お水取り」)の行事が近づくと、「糊こぼし」と親しまれている紅白交互に花びらを並べた造花の椿を摸した和生菓子を戴く。年に一度のお楽しみ。こうして庭に咲いてくれる花々とも、毎年一度の顔合わせ。
 庭の椿は毎年たくさんの花を付け、そして種もたくさん実らせる。種は9月下旬頃から拾い集めて壺にたくわえ、全て拾い集めたら熱海にある工場へ送って椿油に絞ってもらうことにしている。家で収穫できるのはせいぜい1キロから1.5キロ程度なので油もせいぜい200から250㏄ほど。それでも椿油はもっとも酸化しにくい油とされていて、高級天ぷら油として知られている。家では、天ぷら鍋に張れるほどの量にはならないから、カルパッチョやサラダのドレッシングとして食すことになる。すこし癖のある風味があり、口溶けはさらりとしている。サラダを食べたあとなど、唇も潤ってくる。
 油と一緒に返送されてくる椿の絞りかすも大事。これは庭に撒く。ナメクジ除けになるらしい。
2010年2月19日 12:21 |コメント0
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絵:杉本歌子 プロフィール
1967年2月13日、京都生まれ。京都芸術短期大学美学美術史卒。現在、京都市指定有形文化財となっている生家の維持保存のため、財団法人奈良屋記念杉本家保存会の学芸員・古文書調査研究主任に従事。植物を中心にした日本画を描いている。画号「歌羊(かよう)」。

受け継いだ京の暮らし 杦庵の「萬覚帳」

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