お正月の歌会始の御題をテーマにしたお菓子。干支のお菓子とともに京都のお菓子屋にとって新春一番腕の見せどころです。ちなみに「初火」は
菓子習ふ 若き娘等 はじめての
直火つかひて 餅練り上げぬ
から採りました。
漉し餡を紅餡で包み、さらに薯蕷で包み、茶巾で絞って天辺をちょっと立たせて炎の形に作り、蒸し上げました。薯蕷の白い生地から、餡の朱がぼんやり透けて見えます。
子歳、干支頭とも言われます。古事記に大国主命(大黒天)を鼠が野火から救った神話があり、大黒天を祀る神社・寺では子がお使いとして大事にされます。
洛東、哲学の道南端辺りにある大豊神社は椿の名所として、狛ネズミの神社として有名です。
やや細長く形作った薯蕷の片方をツンと尖らせて、こちらは鼠の鼻先とします。蒸し上げてから、焼き鏝(ごて)と紅で目鼻を入れました。
紅白のきんとん、ピンク色に染めた白餡と、練切を振り分けにつけて紅白の梅を表しています。
百花の魁(さきがけ)、あらゆる花に先駆けて新春いちばんに咲くことから、梅は春の訪れを告げる縁起物とされます。お正月らしいきんとんの定番です。
【練切のこと】
つくね芋を裏漉しして、白餡と練り合わせた生地で、毛通しという馬の尻尾の毛で編んだ細い篩(ふるい)で通して使います。
新芋が出る11月中ごろから2月ころまで、練切をつくって、そのほっくりした風味を楽しみます。