立春を過ぎても寒い京の街。御所の梅園では雪が舞う中、百花の魁(さきがけ)、早咲きの梅が咲き始めています。やわらかい雪餅の生地で白餡を包み、淡いピンクの花弁をつくり、花芯は黄色に染めました。
東風吹かば にほいおこせよ 梅の花 主なしとて 春なわすれそ
菅原道真が大宰府に左遷される時に、庭の梅に別れを惜しんで詠んだ歌です。
「下萌」は早春、雪の中からふきのとうなどの若草が芽を出し始める様子を示したもの。薯蕷独特のつややかな白い生地にほんのりと緑色を差してみました。
春日野の 下萌えわたる 草の上に つれなく見ゆる 春の淡雪 (新古今集)
冷たさの底のような2月。昔の人たちは、雪の下からそっとのぞく小さな草の緑を目にしたとき、草花の芽が萌える春を思い、心から喜んだのでしょう。