春雨の ふりそめしより あをやぎの
糸のみどりぞ 色まさりける
(凡河内躬恒)
春まだき、ようやく萌え出だしたばかりのうす緑の柳葉は、
若柳と呼ぶにふさわしい初々しさです。平安時代にも、うららかな陽を受けた枝垂れ柳の若葉を愛でていたのでしょうか。そろそろ鴨川の糸柳も輝くころです。
浅緑のこなし生地に線で枝垂れとゴマで揺れる糸柳をあらわしてみました。
桜色に 衣は深く 染めて着む
花の散りなむ のちの形見に (紀有朋)
812年、嵯峨天皇が南殿で「花の宴」を催したのが、記録に残る最初の花見だといわれます。「源氏物語」をひもといてみても、「花宴」といえば桜。
その昔、桜はその年の作付けの吉凶を占う重要な樹木でした。農耕民である日本人とって、春、ほのかなうす紅色に染まる桜を愛でることは、古来より特別のことだったのでしょう。
花見の時に着ていく着物を花衣というそうです。桜の花は薄い色ですが、もっと濃い色に染めた衣で心が移ろわないよう、願ったのでしょうか。
桜色の衣をういろうで、白餡を包みました。