京都民報
なるほど京都

京の菓子暦

茶の湯と京文化に磨かれ、育まれた京の和菓子。四季折々の京の和菓子を紹介します。

甘楽花子 坤庵

6月

一声(ひとこえ)【ういろう、白餡、大納言納豆】

菜種巻  一声長笛出雲間。ホトトギスの特徴ある鳴声(テッペンタケタカと聞こえます)の事で、初夏の歌によく詠まれています。
郭公(ほととぎす) 一こゑ鳴きていぬる夜は
いかでか人の いをやすくぬる
中納言家持  白餡に大徳寺納豆を置き、空色のういろうで包み、半月型にし、月を横切って鋭く鳴いて飛び去る姿を表現しました。白餡と塩味の大徳寺納豆のバランスが微妙な味を醸しています。


蛍(ほたる)【薯蕷、こし餡、蜜漬け小豆】

藤波の花 源氏物語「蛍」の帖より。
 複雑な心境ながら、宮と玉鬘(たまかずら)の恋を手助けする源氏が几帳の中に蛍を放ちます。その光が玉蔓の美しい姿を浮かび上がらせます。
 小豆粒が蛍、薯蕷の黄色が仄かな明るみを表しています。現代の明る過ぎる夜からは想像できぬ位の夜の暗さ、闇の深さ、なればこその蛍の光なのでしょう。