弥生3日は桃の節句。
「西王母」は中国の神話に出てくる話で能の演目にもなっています。中国の仙境・崑崙山に住む長寿の神、西王母が3000年に一度開花結実する桃の花を帝に献上するというお話で3日は西王母の誕生日とか。
桃の実の優しい色合いを出すため、中の白餡を黄色に染め、ういろう生地の橙色に透けるように重ねてみました。
千家で3月27日の利休忌に使われるお菓子です。千利休の命日は天正19年2月28日ですが、旧暦を新暦に換算して行われています。千家6代の覚々斎好みの薯蕷饅頭でもあります。クチナシで黄色に着色した薯蕷の皮をわざとむいて、表面を朧状に仕上げています。餡は黒糖餡が約束で、利休饅頭とも呼ばれています。
なごの海 霞の間より ながむれば
入日をあらふ おきつ しら浪
後徳大寺左大臣
冬の間、荒れることが多かった海も、春を迎え穏やかに凪(な)ぎ、沖合いまで眺めはるかすことができます。そんなのったりした夕景の海を、ういろうのぼかしで、春らしい紅餡を包んでつくってみました。
見わたせば 柳桜をこきまぜて
都ぞ春の 錦なりけり
素性法師
柳が芽吹き、桜も咲き始めました。若柳と桜を織り込んだ錦の巻物をこなしで表してみました。雲居とは、雲の上、はるか遠くという意味から、宮中、都を表わす言葉として使われています。
色よりも 香よりこそあはれと 思ほゆれ
誰が袖ふれし 宿の梅ぞも
(古今和歌集)
誰(た)が袖は、着物の文様。江戸時代には屏風に好んで描かれました。柳の若草色と桜色の着物は女性なら一度は手を通したいあこがれの色。餡を包んだ形ではなく、薯蕷生地のふっくらした食感を生かし、折り型にして、小袖に見立てました。