京都民報
なるほど京都

京の菓子暦

茶の湯と京文化に磨かれ、育まれた京の和菓子。四季折々の京の和菓子を紹介します。

甘楽花子 坤庵

寒天

 寒天は、17世紀ごろ伏見区の旅館「美濃屋太左衛門」が偶然に心太(ところてん)を外に放置したことから発見されたもので、宇治の隠元禅師(いんげんぜんじ)が寒天と命名したと言われています。原料は「テングサ」「オゴノリ」などの海草で、煮崩してろ過した液体を固めた心太を凍結乾燥して作ります。製法上、寒冷な気候である丹波地方や信州の伊那千穂などの特産品となっています。
 和菓子で使うのは主に糸寒天。凝固力、粘りともに優れています。煮溶かして、糖分、飴、粉類を加えて煮詰めたものが羊羹と呼ばれています。薄く流して、型抜きし、乾燥させたものは干琥珀と呼ばれ、お干菓子になります。
 単にお砂糖を加えただけのものは錦玉糖と呼ばれ、「紫陽花」「水牡丹」など、透明度が高いことを利用し夏季の涼しげな意匠の生菓子作りに使用されます。このほか、淡雪羹、道明寺羹、味甚羹、練羊羹など広い用途で使われます。

  • 糸寒天です。他に棒寒天、工業的に製造される粉寒天があります。和菓子には昔から凝固力、粘りともに強い糸寒天を使用します。原料はテングサ等の海草です。
  • 使用する半日位前から少しかぶるくらいの水につけておきます。夏冬、気温によって多少戻る時間に差があります。火にかける前に水は捨て、新しい水で炊きます。

  • 強火で煮て溶かします。沸騰してから3分ほどで完全に溶けます。粉寒天の場合は、沸騰した時点で溶けています。
  • 煮詰まるまでずっと強火です。上白糖を入れたところ。お好みで他のお砂糖でも可。

  • お砂糖の量が余りに少ないと、透明度が落ちたり、粘りが弱くなったりします。
  • 杓子で垂らしてみて、糸を引く状態まで煮詰まったら完了。錦玉糖溶液の出来上がりです。

  • 熱いうちに流し函や密封容器等に流します。
  • 上白糖(白双糖でも可)を入れて沸騰した時点で漉餡や白餡を入れますと練羊羹になりますし、錦玉糖に黒糖を入れたりカラメルで着色しますと琥珀糖、道明寺を入れると道明寺羹、桜味甚粉を入れますと粟羊羹になります。

  • 溶液の温度が40度以下に下がると固まりはじめます。充分に冷めてから切ったり冷蔵庫に入れてください。
  • 10

    錦玉糖の透明感を生かした夏の生菓子をつくります。

  • 11

    波包丁で切った錦玉糖で青く色づけした白餡をまいて「水車」。
  • 12

    玉となって弾け飛ぶ水の飛沫が周りの彩を映した相です。


完成

右上から時計回りに「水車」、「夏衣」、「玉水」、
寒天を使った生菓子と、黒糖入り小倉羊羹「ぬばたま」、粟羊羹と4色に彩色した錦玉糖の組み合わせで「あぢさひ羹」です。