京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

アガル(あがる)

 ここでいう「アガル」(上る)というのは、(A)かち得るとか終るの意と、(B)京都的な北へ行くということについて述べたいと思う。京都での「アガル」とは、御所へ向って北へ行くことであって、「サガル」は反対に御所より南へ向くことであった。江戸人からみた江戸後期の『柳多留』に「京の町たいらな所で上り下り」とあるように、京の町では「アガル」も「サガル」も土地の高低にはなんらの関係もなかった。  雑俳をみても、「九重(ここのえ)は、上る下るでむつかしい」元文元年(1736)とあり、「九重」は皇居のある京都のこと、また、「お嬉しかろ 上る縫子の耳引く師」文政元年(1818)と庶民の生活も描き出している。この「上る」は資格を得た意であろうと思われる。策略を弄せずとも「アガル」ものは「アガル」のである。ここらで「ホッコリ」した私も「アガル」こととしたい。まる2年間、お読みいただいた方、ありがとうございました。