京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

アワイ(あわい)

 同じ名詞であっても、生活に関した「アワイ」がある。「アワイ」は、物と物との間という意をいう。もちろん、人と人との間がらにも使う。慶安3年(1650)の『かたこと』に「又は親子主君従者のあはひにもいふべし」とある。語源は「アヒアヒ」(相合)の約ともいわれる。『伊勢物語』に「伊勢、尾張のあはひの海づらを行くに」とでている。『源氏物語』にも「几帳ども立てちがへたるあはひより見通されて」とある。この「アワイ」、「机と壁とのアワイに、えんぴつはまってしもたワー」などと使う。  雑俳でみてみると、「うづみ火じや おびのあはひへはさむれそ」享保10年(1725)とあって、「レソ」は「ソレ」の逆語でこの場合は恋文のことをさす。また、「あはいより 首をだしたるはしこ売」宝永2年(1765)ともあり、当時の洛中のようすが描かれている。「アワイ」は、「アワイサ」「アワサイ」ともいい、全国的に及ぶが「アワイサ」は京都的である。