「チャント」は、京ことばでは、きちんとしっかりという意味をもつが、語史的にも方言としても、いまひとつわかりにくい語である。しかし、日常的には「チャントしトカントアカンデー」とか「このごろの子は、チャントしつけができてへン」とかよく使用する。この語の語源は丁度ともいわれるが、ただ「チャット」が「チャント」に音転化したものではないのか。おそらく、気ちんとの意をもつ擬態語からきたものと思われる。
雑俳の例でみると、「けなりやの こなたはちやんと御正月」天保10年(1839)、「ぬからぬぬからぬ お箱へちやつと調子替え」弘化3年(1846)、「つぢうら ちやつと上げとこ神棚へ」明治25年(1892)とか「ちやんともう 長屋に壱人(ひとり)ある貸間」明治30年(1897)などとでてくる。これらからみると、幕末ごろから、「チヤット」が「チャント」へと音変化して、現在に至ったものだろう。