なるほど京都 京都民報

京のことば

今ではあまり聞かれなくなった京ことば。京ならではのことばと意味を紹介します。

木村恭造(「京のことばを残す会」助言者)

ジュンサイナ (じゅんさいな)

 「ジュンサイナ」とは、いい加減なとかでたらめなの意味をもつ。漢字をあてれば、蓴菜なであって、もともとは水草をいう。吸い物などに入っていれば、のどごしがよく高級料理となる。とくに、京都市北区の深泥池の蓴菜は有名であった。しかし、この蓴菜はぬるりとして箸にかかりにくいところから、悪い意味で使用されるようになった。俗に言う、二股膏薬(こうやく)で、どちらにもつくようないい加減なという意に転化したのである。
 庶民がいう雑俳をみると、この意味転化の時期がよくわかる。「さほだけで 盥(たらい)こぎ出す蓴菜取」文化十四年(1817)とあるのが、天保四年(1833)ごろになると、「きらいじやへ とんと歯切れのせぬ蓴菜」「ぬけぬけと 八百やのかかは蓴菜じや」などとなる。このあたり、文献資料がほとんどないが、雑俳でみるとよくわかる。この語は、大阪ことばとしてもよく使用される。