「ツクリ」はつくり身の下略語で、魚の刺身のことである。それは主に海魚についていうのであって、川魚については刺身というのが通例のようだ。「ツクリ」とは作るからきていて、皿などに花形とかにつくり盛るという調理法からでたという。なかでも、鯛などの高級魚の調理についてのことであった。嘉永6年(1853)の『守貞漫稿』に「今世も、京阪にては鮒などをふなのさしみと云、鯛などは作り身と云也」とあり、明治19年(1886)の「東京京阪言語違」には「つくりみ(京阪)、さしみ(東京)」とある。
上方雑俳でみると、「つくり身の鯛炮碌(ほうろく)のあとへ出る」安政3年(1856)、「さぶつけない 仕様知らんのか作り身の」明治25年(1892)などと幕末ごろからでてくる。「炮碌」は土なべ、「さぶつけない」はおぼつかないの意であろうが、京都では接頭語の「オ」をつけて、「オツクリ」と親しみをこめていう。