京都民報
なるほど京都

京のお人形

人形寺・宝鏡寺学芸員が語る、京のお人形話あれこれ。

著者:田中正流

【コラム】人形供養

有職雛  人形は、人間の姿を模して作られた愛玩物ですが、人の姿をしているがゆえに、他の愛玩物と違って特別な感情を抱かれることが多くあります。近年では特に無責任なテレビや週刊誌等のメディアによって、心霊ブームと相成って、人形に対する負のイメージが強くなっています。例えば髪がのびるとか人を呪うとか・・・特に日本人形にそのようなイメージを持ちやすいようです。住宅事情で人形の保管場所に困ったり、押入に入れっぱなしにするなど蔑ろにしている人形があると、人形を供養している場所へ持ち込みます。宝鏡寺もその一つです。
  宝鏡寺では毎年10月14日に人形供養祭を行っております。主催は京人形商工業協同組合で、昭和34年に建立された人形塚の前で法要が催されます。毎日人形の供養は受け付けておりますが、この日は総供養の日ということで参拝者の方は御門跡方のお勤めの様子が見学できます。また供養される人形にお焼香をあげることもできます。法要に島原の太夫も参加すると言うことで太夫目当てで参拝される人も多々おられます。
  現在、全国100カ所以上もの場所で人形供養が行われておりますが、それらの大半はここ50年ほどで始められた歴史の浅い行事です。最近では人形供養の集客率に目を付けた地元の観光イベントとして新しく始められた地域もあります。
  家族など身内に不幸が重なり、それを人形のせいにして、人形供養をすれば厄を落とし福を呼ぶことができると考える方もおられます。またそうではなく本当に大切にしている人形だからこそ、冥福を祈るため人形供養に出される方もおられます。
  宝鏡寺では人形に持たせるお守りを頒布しております。このお守りは自分の大切にしている人形に持たせることによって、いつまでもその人形が吉祥の人形であり続け、ご自身に招福の御利益が訪れるようになります。
  現在の消費社会では古くなったりいらなくなれば処分し、新しく購入すればよいと考える人が一般的になっています。ここでもう一度ものを大切にするということ、ものに感謝するということを考え直しても良いのではないでしょうか。おもちゃとしてまたは観賞のために購入された人形にケガレを押しつけて祓われるようなことは可哀想な気がします。せめていままでありがとうと感謝の気持ちでお供養に出してあげましょう。

写真:人形供養 於宝鏡寺