賃金の支払い確保
「退職金払わず、社長が逃げた」―途方に暮れる男性社員に救いの手
国の立て替え払い制度を活用
2月のある日、南区の家電部品メーカーの男性労働者2人が、 京都労働相談センターに駆け込んできました。「首切りされたうえに、社長が退職金を払わず、行方をくらました」。途方にくれる2人に相談員は言いました。「大丈夫。 退職金は手に入りますよ」。
全員リストラして破産宣告
2人は怒りに満ちた声で交互に事情を説明し始めました。 このメーカーは、 経営難に陥り、 そのツケを従業員に押し付けて乗り切ろうとしてきました。
「昨年8月と9月、 10月の3回にわたって首切りや賃下げが強行されました。 あげくに暮れもおしつまった12月27日に全員クビなんですよ」
「年があけたら会社は破産宣告。 そして社長は、 どこかに行方をくらましたというわけです。 ほんまめちゃくちゃな話ですわ」
「12月分までの給料は支払われてるんですが、 退職金は未払い。 うちは労働組合もなく、 力あわせて解決というわけにもいかん。 なんとか社長を見つけて退職金を支払わせることができないでしょうかね」
探し出しても払う能力なし
事情を理解した相談員はいいました。「会社が倒産して、今の経営者には賃金や退職金を支払う余力はないと思いますよ」。途方に暮れる2人。そこで相談員はやさしく言葉をかけました。
「そういうとき、 労働者を守るために国の立替え払い制度というのがあるんですよ」。
「立て替え? 国がわしらの退職金払ってくれるんですか?」
「はい。 倒産した企業の事業主にかわって支払うというものです。 事業所の所在地を担当している労働基準監督署に行って、 申請すればいいんです」 とアドバイスしました。
半信半疑ながら2人は、 まず破産管財人から破産の決定日、未払賃金額、立替払額等を証明する「証明書」の交付してもらい、労働基準監督署にある「未払賃金の立替払請求書」とともに提出。
約1カ月後に無事退職金を受け取ることができました。
(「週刊しんぶん京都民報」2004年11月14日付)