労働基準法上の労働者
(協力:京都労働相談センター)
「請負は労働者じゃない?」――疑問を感じたコンピューター技術者
指揮命令受ければ労働者
Tさん(31)は、派遣会社と「請負」契約をして1年半、自動車販売の営業所(久御山町)でコンピューターのシステム開発の仕事をしてきました。派遣元の会社は、社会保険加入などを要求しても「請負」契約だからと聞き入れようとしません。
Tさんは、「請負」ではなく実態は派遣労働なので、労働組合に加入し労働基準法を守らせようと立ち上がりました。
社員と同じ勤務残業もあり
法律上「請負」契約は、労働契約とは異なり、仕事の完成が目的で発注者が労働者を指揮命令できないことになっています。
Tさんは、この仕事を180万円で委託されました。
しかし、派遣先の社員と同じように朝9時に出勤、終業は午後6時。
夜12時までの残業もたびたびあります。仕事内容も派遣先の社員の指示に従って行い、報酬も月々分割して支払われています。
事実上、派遣労働者なのに有給休暇の取得や社会保険、労働保険は未加入など労働基準法は適用されていません。
実態示し派遣契約検討さす
Tさんは、労働相談センターで「『請負』なので労働者としての権利は認められないのでしょうか」と相談しました。
相談員は、「たとえ『請負』契約を結んでいても会社が指揮命令して仕事をさせている場合は労働者としての権利が認められます。
労働組合に入って団体交渉しましょう」とアドバイスをしました。
Tさんは、JMIU(全日本金属情報機器労働組合)に加入し、派遣元の会社と団体交渉をしました。
会社側は、「請負契約」であるとして労働者としての労働基準法の適用を認めようとしませんでしたが、具体的に労働時間管理の方法(タイムカード)や仕事の指示、仕事をする場所、給与の支払い方法などを示して実態が派遣労働者と変わらないことを明らかにしました。
派遣会社は、即答は避けましたが、趣旨を理解して派遣社員として契約する方向で検討することを約束しました。
(「週刊しんぶん京都民報」2005年5月22日付)