高級料亭の風格に合わない仕事ぶり (皿洗い)を理由に突然の解雇
(協力:京都労働相談センター)
相談者:Nさん(女性・60歳)京都在住・高級料亭Kで勤続8ヶ月、皿洗い
Nさんは、社長がテレビの料理番組に良く出演している、東山区にある高級料亭Kで、今年3月から皿洗いとして働いていました。
11月15日、突然、明日から来なくて良いと解雇通知を渡されました。解雇の理由は、「所属上司への不服従」とあるだけ。おまけに、1ヶ月分の賃金額100,000円(解雇予告手当のつもり?)を、指定口座に振り込み、かつ「11月16日より12月15日までは出社するには及ばない」と明記してありました。
Nさんは、解雇理由が納得できない。自分の人格を全面否定されている…何とかならないかと、京都市職労新聞を持って、帰宅せず相談に見えられました。
対 応 労働基準法では、解雇するには「社会的・合理的理由」が無ければその解雇は無効になるとアドバイス。とは言え、1人で会社に解雇撤回を要求してもうまくいかないと判断し、全国一般に加入して団体交渉を申し入れることにしました。そしてその場で、高級料亭に電話し、詳しい「解雇理由書」の発行を求めました。
数日後、KS法律事務所から社長の代理人と称する弁護士が内容証明で送りつけてきました。直ちに、団体交渉開催を申し入れたところ、「この案件は、司法が判断するもので団体交渉は出来ない」と拒否してきました。労組の抗議に態度を改め謝罪し、団体交渉を持つことを約束しました。12月11日に第1回団体交渉が持たれ、解決の方向で進んでいます。
結 果 組合からの「解雇理由、解雇に至る経過から解雇権の濫用に当たり不当、解雇を撤回せよ」「紛争解決までの組合員の身分・所得の保証を行え」として団体交渉 を申し入れた要求書に対し、会社側弁護士は「この案件は、解雇が有効か無効かの司法判断に属し、労働条件についてなされる団体交渉事項ではありません」と いう珍説を展開した内容証明付き「回答書」を送ってきました。
これに対して「解雇という重大な労働条件変更について『団交事項でない』とは、弁護士が業として不当労働行為を行うつもりか」と迫り、団交事項でないとし たことについての、撤回と謝罪を行わせました。しかしその後2回の交渉は、社長の多忙(TV出演する時間はあっても団体交渉に出席する時間はないらしい) を理由に弁護士のみの出席で行われ、そのつど「これでは団体交渉ではない、事務折衝に過ぎない」と抗議しつつ、進みました。
結果的に、会社として手続き的にも内容的にも解雇の正統性がないことを認め、解雇理由に記載した本人の人格を否定した記述に対して 陳謝したことで和解に至り、本人の希望もあり、 「解雇撤回」「解決金の支払いと自主退職」と いう形で決着しました。
ちなみに当初「解雇予告手当」として一方的に払われた10万円は、解決までの間の休業補償手当として扱わせました。