黒衣

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 黒衣には二通りあって、いわゆる後見と狂言作者がある。狂言作者は幕開き幕切れの柝(き)を入れたり、役者が台詞を覚えるまでのプロンプターをする。頭巾はつけない。歌舞伎ではだいたい「御定法三日」といって、初日から三日間は台詞をつけてもらってもよいことになっている。他の芝居では考えられないが、毎月二十五日間の興行で、次の舞台が開くまで四、五日しか時間がないことを思えば当然かもしれない。

 黒衣の変形
○波後見は、黒ではなく水色の着付である。主として背景が海の場合。浪衣(なみご)という。
○雪後見。この場合は白の着付となる。雪衣(ゆきご)という。
 この二つは保護色という関係で、先人の知恵の深さを感じてしまう。

○着付後見。袴後見ともいって、黒紋付着付袴でつとめる。おもに所作事の場合である。
○裃(かみしも)後見。着付にさらに裃をつける。これにはさらに二つの場合があって、地頭(鬘をつけない)の場合と、鬘をつける場合がある。前者は松羽目の「茨木」や「土蜘」。後者は「勧進帳」など。大時代な歌舞伎十八番では柿裃をつけることになっている。

 黒衣と、着付(裃)後見の仕事は共通しているが、大きな違いがある。黒衣は絶対に顔を見せないのに反して、着付後見は公然と観客のまえに顔をさらす。番付にも名前が載る。

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08/02/18│歌舞伎まめ知識