二枚目あやうし

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連獅子 「別にこの人のアップなんか見たってしょうがないのよぉ。ねえ、今どきの大河ドラマってどうして二枚目が出ないの?」
 時代劇好きの姑が、日曜日の夜のNHKを見ながら続けたものだ。「いつも西田敏行や竹中直人じゃぁつまらない」と嘆息する。
 たしかに、十一代目団十郎や当代の菊五郎仁左衛門の熱烈なファンの姑にしてみたら、ボヤキはもっともなことと思った。(この発言、失礼があったらお許しあれ)。水も滴る美男子より、アクの強い性格俳優がもてはやされる風潮になってどれくらいたつのだろう。
 江戸時代、十一月の顔見世は一年契約で抱えた役者たちの顔ぶれをみせる、重要な興行だった。その際、劇場に掲げた看板には、座頭から順に名前を列記する。二枚目には美男役者、三枚目には脇役の道化方が配された。これがそのまま現代に受け継がれ、二枚目というと美貌の色男、三枚目は滑稽な愛嬌役という呼称になった。
 歌舞伎で二枚目の条件は「一声二顔三姿」。十一代目市川団十郎の助六などは、まさにこの典型だった。孫の海老蔵の人気が高いのも、祖父を知る贔屓が「十一代目に生き写しよ」と広目屋(ひろめや)をかって出るからである。
 松竹座二月舞踊公演では、その海老蔵が右近と共に「連獅子」を勤めた。初めての親獅子は如何ならんと注目を浴びたものだ。後段の勇壮な獅子の舞にはゆとりがあり、髪洗い、菖蒲打ち、巴など品格を崩さずよくまとめていた。熟練の腕前で見せたというより、大きな目玉で押し切ったといえるかもしれない。
 ところで二枚目という言葉は、とみに影が薄くなってきた。ハンサム、二の線という言い方も古いようで、今はイケメンというのが主流らしい。しかし天下の美男をこんな品下(しなくだ)る言葉で呼ぶのは、ちと寂しいものがある。(挿絵:川浪進)

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08/03/10│歌舞伎のツボ│コメント1

コメント

お春さん

二枚目というのは歌舞伎から出てきたのですね。二枚目の条件が「一声二顔三姿」ですか。なるほど、舞台役者ですものね。発声が良くないと、聞き取れませんものね。

このごろ、沢山の「イケメン歌舞伎役者」さんがテレビや映画に出ているのは、歌舞伎を若い人にもなじんでもらうため、と聞いた事があります。本当でしょうか?

アクの強い性格俳優も良いですが、やはり眉目秀麗、水も滴る美男子は良いですね♪

二枚目はやはり永遠に不滅です。ウフフ。

今回の挿絵も素晴らしいですね♪

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