桜餅あれこれ

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しめこのうさうさ 貴方は桜餅の葉(皮)を食べますか。それとも残しますか。高浜虚子の句に「三つ食へば葉三片や桜餅」とある。彼は残す派だったらしい。粋だから食べるという人、移り香を楽しんで残すという人、様々のようだ。また関西、関東では中身も違う。京都の桜餅は道明寺粉を使う。こし餡を道明寺粉で包んで蒸すと、中の餡がうっすらと透けてみえる。その上から塩漬けにした桜の葉を包むように巻く。餡の甘みと葉の塩味に道明寺が絡んで、季節の美味しさここにありという気がする。
 芝居では「隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)」、いわゆる「法界坊」に桜餅が登場する。番頭の長九郎がおくみの乗っている駕籠のまわりに荒縄をかけて「しめこのうさァうさァ」と軽妙に演じた後、道具屋の市兵衛が、長命寺の桜餅である烏帽子籠のまわりに、紐をかける。この鸚鵡(おーむ)は実に愉しく、心がワクワクするところである。
 鸚鵡というのは、鳥が人の口真似をするところからきた芝居の隠語だった。
 主役が決め台詞を言って引っ込んだ後に、脇役がすぐ真似て、同じような台詞や仕種をする。この道化は、えも言われぬ面白さを醸し出すため、見物の手が来るところだ。
 江戸時代、お花見のころに浅草の観音様へお参りの客は、長命寺の桜餅を買った。文政期、屋代弘賢は「兎園(とえん)小説」の中で「この茶店で使った桜の葉は一年間に七十七万五千枚」と計算している。よく数えたものですなァ。平成の今は伊豆地方で加工して出荷される葉が、なんと年間四億枚だとか。
 小話を一つ。長命寺の茶店で桜餅を頼んだ客に、店主は「かわ(皮)をむいてお召し上がりを」と言った。「なるほどよい眺めだ」と客は茶店の前を流れる隅田川を向いて、皮のまま食べたという。(挿絵・川浪進)

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08/03/31│歌舞伎のツボ│コメント2

コメント

お春さん

今日は季節に相応しいお話ですね。御地はお花見ですか。羨ましい。当地はやっとクロッカスが咲き始めた所。桜はGWに咲くか、咲かないか....です。

桜餅、私は甘いものには目がないので涎が出ましたよ。桜餅の桜の葉は4億枚ですか!

「しめこのうさァうさァ」面白い♪
川を向いて、皮をむかずにたべたのですかぁ!これも、面白い♪ウフフ。

いつもの挿絵がまた面白い♪

春香さん

「鸚鵡」ほんと楽しそうですね~。
春香さんのブログを読んでいると歌舞伎の楽しさが伝わってきます。
いつもありがとうございますう!!
さて、美濃も春爛漫です。
今夜は、せっかくの満開の桜が、強い風で散ってしまわないか心配をしています。
桜餅、食べました食べました。
皮はもちろんつけていただきます。
当地も関西風桜餅ですね~。
川浪画伯の絵は、いつも、余白も素敵ですね。バッグの微妙な色遣いに感心しています。
にじみ、点々、絵も不勉強ですが、直感(!!)でお気に入りです。

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