ジワは、じわじわ(こんぴら歌舞伎)

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こんぴら歌舞伎 1985年から始まったこんぴら歌舞伎も24回を数えた。長生きはするもの。金丸座へ行って、初めてこんぴらの語源がサンスクリット語のクンピーラからきていることを知った。ガンジス川にすむ鰐を神格化したものらしい。これが水神なので室町以降、漁師や船頭たちから海上守護神として崇められてきたという。人が寄るところには芝居小屋ができるのは世の常である。紆余曲折のすえ、日本最古の芝居小屋として国指定重要文化財となったのは、1970年のことだった。
 さて海老蔵の「暫(しばらく)」は豪快無比である。台詞の抑揚にはまだ問題があるが、音吐朗々としたツラネで座頭の風格を充分にみせた。
 何しろ前髪付き五本車鬢(くるまびん)の鬘(かつら)、力紙、紅の筋隈、六尺八寸の大太刀に三升大紋をつけた柿色の素袍(すおう)である。まだあるまだある。体は肉襦袢の上に綿の入った分厚い衣裳をつけ、丸括けの帯は十人もかかって締め上げるほどの太さ。さらに五寸の継足を履いた上に長袴をつけるのだから、その大きさは推して知るべし。
 暫くの声と共に、揚幕から登場した姿の巨大なこと。まさしく、金丸座の屋台骨がぐらりと揺れた。背中はぞくぞく。熱気がむんむん。客席からはジワがおこる。じわじわ。
 大拍手と歓声がこの小波をゆっくり呑み込んでゆく。舞台間口十五間という広い歌舞伎座などでは味わえない、役者と見物が渾然一体となった瞬間である。この「ジワ」は通言で、えも言われぬ役者が出てきたときに客席がさざめくことをいう。演劇評論家の戸板康二氏はこれを「声なき声」と呼んだ。一期一会の芝居の醍醐味がここにある。周囲の役者はまだ手探りの状態だが、老練な梅之助の局常盤木や、松太郎のわいわい天王の台詞で舞台がぴんと引き締まった。(挿絵・川浪進)

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08/04/14│歌舞伎のツボ│コメント2

コメント

春香さん

今回もワクワクとした気分で読みました。
ありがとうございます。
「声なき声」ありますね~。
舞台用語から派生して一般の用語へと
使われる。多いのですね。
「ジワ」じわじわ、一期一会の醍醐味ですか。
いいなあ。

お春さん

むむ?四国に4年も住んでいたのに、知らなかった!と、思いきや、初公演が1985年!もう北国に移った後でした。通りで!!

「こんぴら歌舞伎」─ どうせちっぽけなお芝居だろうなんて、凄い勘違い!あら、ハズカシや!

当世の人気役者さんが演じ、歌舞伎を江戸時代のスタイルそのままに楽しめるとあって、全国から歌舞伎ファンがドカンと集まるという、金丸座!知らなかった!

まだ、やっているみたい。行こうかしら?でもチケットがなかなか取れないそうですね。
 
舞台と客席が一体化した劇場空間での
海老蔵さん。迫力あるでしょうね。あの「おめめ」ですものね。

藤沢周平のある小説の解説に、出久根達郎氏が「時代小説は、リズミカルな名文でなければ、面白くない」って書いていましたが、お春さん!流石時代劇作家!女にしておくのは勿体無いくらいの(失礼!)歯切れの良い、テンポのある描写!!

先週のサッカー欧州CL準々決勝でアーセナルにリバプールが勝った時以上の興奮を感じやしたよ!ウフフ。

ジワはじわじわですか。面白い♪皆に語って聞かせやしょう。

挿絵がまた凄いど迫力!

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