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おでかけレポート

「旧暦のお雛膳」盛会

4月5日、杉本家にて「旧暦のお雛膳」の集まりを開催しました

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杉本家の前で

 晴れ渡る青空、満開の桜。最高のお日和となった5日、第1回目となる着物クラブイベント「旧暦のお雛膳」を開催しました。現在では3月3日が「桃の節句」とされていますが、旧暦でいうとちょうど4月頭くらい。今でも旧暦にあわせ、4月に行う地方もあるとのこと。ここ杉本家でも、旧暦にあわせて桜の季節にお雛膳を囲む会を催しました。
 遠くは東京、静岡、伊丹からも来られたみなさん、どなたも素敵なお着物でした。降ろしたての格子柄の白大島に草木染の帯や、お母様から伝わった極鮫の江戸小紋、訪問着などをはじめ、ボタンの大輪の手描き友禅に金銀糸の袋帯、大島紬にウサギの染め帯などなど、着物好きにはたまらない皆様のお召し物でした。

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奥:身しじみの生姜煮、手前右:かまぼこと蕗の薹、手前左:ばらずし

 本日の節子さんの「雛御膳」は、桜湯から始まり、「身しじみの生姜煮」、「かまぼこと蕗の薹」、「赤貝と分葱のてっぱい」、「ばらずし」、「蛤のおすまし」、「ひちぎり」と続き、箸休めに「お大根の漬物」をいただきました。
 「赤貝と分葱のてっぱい」の「てっぱい」とは、「鉄砲和え」のこと。「ぬた」と呼ぶほうが一般的でしょうか。葱をゆでる際ポンと音がして鉄砲のようだとか、ゆであがった葱をしごいて芯のぬめりをとる際に音がすることからだとか、芥子を使いますので、それが辛くて鉄砲に当たったようだからだとか、いろいろな説があります。普段の食卓にも登場する「ぬた」ですが、赤貝が入ると、ちょっと「ごちそう」な感じがします。
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丁寧にお話くださる節子さん(奥)

 そして、「ばらずし」。「ばらずし」には、各家庭それぞれの味付けがあるものですが、ここ杉本家のそれは割と酢がきいたもの。混ぜ込まれたショウガの風味がきいて、なんともいえず美味しく、お替りをする方も。
 お寿司の彩りには、海老としいたけ、空豆にれんこん、そして木の芽を添えて。錦糸玉子の黄色に豆の緑と海老の赤が映えて鮮やか。杉本家の伝来のレシピでは、それぞれの具を別々に煮て、さいの目に切って混ぜ込んでいます。
 「ばらずし」とともに供されたのは「蛤のおすまし」。蛤の貝殻は対になったものしか合うものがありませんので、貞節・夫婦和合の象徴として婚礼料理などには欠かせないものでした。お雛飾りにも「貝桶」というお道具が飾られています。
 そして、最後にいただいたお菓子はひな祭りの定番、「ひちぎり」。一般に上菓子などでいただく「ひちぎり」は「こなし」の台に丸めた餡が載ったものですが、杉本家のそれは草餅に餡を載せたもの。この草餅は、杉本家の庭の蓬を搗き込んで作ったものだそう。途中、箸休めにいただいた「漬物」も、もちろん節子さんのお母様が手ずから漬けられたもの。何からなにまで温かい手作りの味でした。
 最後に、節子さんからは「祖母や母がこしらえてくれたバラ寿司の味はいくつになっても忘れられないお雛さんのごちそうです。生ものの飾り具材を使わず、贅沢に成りすぎないのが昔ながらの京のばらずしです」などなど、丁寧にご説明いただきました。最後まで手作りの優しい味に感動の連続でした。
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吹き抜けの「走り庭(台所)」にて説明を受ける

 食事の後は、節子さんに京都市有形文化財に指定されている邸内をご案内いただき、質素だった江戸期の食事や暮らしぶりについてうかがいました。殊に走り庭(台所)での「決して他所様をお通しすることのない部屋だったので、天井をこしらえず、梁むきだしのまま」だという説明に感心しきり。うちうちは質素に、人をもてなす場はきちんと室礼を、という京都人の心意気を感じました。
 杉本家を後にした一行は、「唐長三条両替町サロン」へ。
 現在、京唐紙を作り続けているのは、京都でもこの「唐長」だけ。創業は十七世紀半ばだという唐長さんには、1792年を最古とする版木が今でも600枚以上保存されており、今でも現役で使われているとのこと。この「三条両替町サロン」では、唐紙を生かした素敵なインテリアを提案しています。この日はちょうど開催中の「桜」展を鑑賞し、お雛膳にひきつづき春の日を満喫しました。

スタッフより:桜花盛りの4月5日、心配されたお天気も日本晴れ。絶好の“おキモノ日和”でした。食事もおしゃべりも皆様に楽しんでいただけたようで、記念すべき第一回「着物クラブ」イベントとして幸先が良いスタートでした。なにより、着物好き同士のおしゃべりは心弾むものだったのではないでしょうか。これからも「着物クラブ」をよろしくおねがいします。