和布ものがたり
帯地
ひとくちに「帯地」といっても、たくさんの種類があります。京都西陣で織られているものは、袋帯が多く、金糸、銀糸が織り込まれた豪華な布地、昔ながらの古典的な模様のシックな帯もあります。袋仕立てにしないザックリした織りの帯も味わい深いです。
その時々の着物に合わせて、帯を選んでいけば楽しいと思います。帯は着物があってこそ成りたつもので、組み合わせようによって表情を変えます。組み合わせには、「きまりごと」があります。「紬」に合わせる帯、「綸子」に合わせる帯、「黒留」の時の帯等々…。季節感も大切にされる「絽」の着物には、「絽」や「紗」の帯をしめ、涼しさを表現してきました。四季おりおりに、「着物文化」が、日本人の心を育んできたのだと思います。しかしながら、この文化が大きく変化してきています。住宅の洋式化や、日常的に着物を着なくなってきた事等…。いろいろな要因があると思います。
コストダウン(人件費等)のための海外での生産や技術の流出により、国内での生産が減少。一部の会社による利益追求だけの売り方も、その要因に含まれるでしょう。町の中から機音がとだえ、需要と供給のバランスがくずれ、廃業していく織屋さんが増え続けています。
私の母の時代には、手が届く着物と帯を、何回かに分けて支払い買い求めていました。今でいえば、洋服をカードで買うように…。いつのころからか、着物も帯もローンの回数の多い買いもの商品となっていました。庶民が常に何点も買えるものではなくなってきたのでしょう。
その点、古着は安く、何点も買えるというので、古い着物がどんどん売れています。若者は着物が大好きです。北野天満宮の市(25日の天神さん)には、古い着物を着た男女が楽しそうに歩いています。浴衣姿も多いです。
多くの庶民が作り築いてきた「着物文化」を、作り手は原点に戻りものづくりを考えていかなければならないのではないでしょうか。
※写真:金魚が連なるめずらしい柄の帯。
※写真で紹介している帯は、見本反の短い織物が多いです。廃業していかれる織屋さんから頂いたものが多く、帯地を見ていると、くださった方の淋しそうな顔が浮かんできます。