HOME着物美人 > 内藤鶴子さん  祗園ない藤

着物美人

内藤鶴子さん  祗園ない藤

 「祗園ない藤」に神戸の生家から嫁いで43年になります。ずっと洋服で店に出ており、着物を着始めたのは13年前からです。着物は好きで、いずれは着ようと少しずつ蓄えておりました。
 主人がお正月に入院した時のことです。いつも「えびすさん」に来られるお客様をお迎えするのが慣わしでしたので、息子(5代目・誠治さん)に「主人の代わりに女将さんが立たなあかんなあ。着物を着るいい機会やね」といわれたのがきっかけでした。着始めたら、一途なもので、その日からずっと着物です。
 店内は、お履物の色があふれていますので、私は無地に近い着物を選んで着ています。帯は大げさにならないよう、半幅帯です。ひもは1本、帯枕も使わないので体も楽です。
 着物は毎日着ていると、香り、色、肌触り…と五感が鋭くなってくるように思います。思い入れも洋服とは格段に違います。母や祖母、親しかった人の着物や帯留めなどを身に付けると気持ちが落ち着きます。その方たちに守られているような、励まされているような、そんな心持がいたします。
 洋服の時は自分の個性を出すことを考えて選んでいましたが、着物はまわりの人たちの中での自分を意識しながら着るものだと思うようになりました。お客様と着物や和小物の話題で盛り上がることもしばしばで、ご縁を深めさせていただいております。目や耳、心で感じる、ちょっと余裕が出てきたのは、年齢のせいなのでしょうか。だんだん、私の中に潜んでいた日本人としての感覚が高まっていく、そんな気がしております。


 この日の内藤さんのお着物は「満天の星」という銘の紬に半幅帯。グレー地に飛び柄で臙脂や藍色の水玉模様が素敵です。帯はお好きな紫色に菊模様の半幅。襦袢は着物と同じ水玉模様でした。


履き物 祗園ない藤
東山区祗園縄手四条下ル TEL075・541・7110