和布ものがたり
「宝船」
文様の中に流れる 日本人の心
12月もあと少しを残し、あわただしく毎日が過ぎていきます。新しい年を迎えるにあたって、正月の縁起物の一つ「宝船」の文様を紹介します。
宝船に乗せられている宝尽くしは、室町時代に起こったものらしく、縁起のよい福徳を招来するものとして、庶民の間に喜ばれました。
この思想は、中国ではじまったものです。1月2日の夜、宝物と七福神を乗せた船に
「なかきよの とおの ねふりの みな めさめ なみのりふねの おとの よきかな」
という回文を記したものを枕の下にして寝るとよい初夢を見るといわれ、明治中期まで広く行われました。来年は、私もやってみようと思います。
※宝船の中に乗せるものや、その形はさまざまで、旧時、宮中では米俵と宝物とを乗せ、帆に悪い夢を食うという「獏」の字を書いたとのことです。これに倣ってか、一般では「宝」の字を円の中に書きました。
豊かになりたいという人間の想いと文様
宝尽くしの文様の中身
巾着
銭貨、お守り、香料等を入れるもので、古今問わず大切にされた
宝巻
巻物は、知識、徳義の宝庫
宝珠
金銀財宝、望むものを思うままに出すことができる霊妙不可思議な珠
俵
豊作を願う
小槌
打てば望みのもの何によらず出てくる
隠れ蓑
これをかぶればどこからも見られない
隠れ笠
これを着れば実を隠すことができるという
鍵
わが国の土蔵の戸などにつけた落とし錠と称する錠をはずすのに用いる鍵で、縁起のよい福徳の象徴とされている
分銅
計りで物の目方を量る「おもり」。形が簡明で均等を得て美しいので文様や家紋にされた
犀角杯
※一つ一つの文様の意味を楽しみながら見ていただけたらうれしいです。
※今回は「文様の事典」(岡登貞治著)より調べさせていただきました。