着物クラブ

　京都市北区の鷹峯の山中に、「仏谷（ほとけだに）」というところがあります。野仏が多い地域です。その近くに工房を持っていたことがあり、布でお地蔵さまを作り始めました。1作目は「仏谷」というテーマの作品でした（写真）。

　木工職人が作った額に布が入り込むよう、溝を入れてもらいました。
　布は「キフ」という布を染めて、地色のブルーを出しています。目が粗いので表情が出ています。ブルーの上に同色でキルティングを入れています。お地蔵様は、グレーのコットンにステッチでラインを入れました。木の枝には大島紬やウールなどを使いました。木の実は結び玉をあしらい、彩りを添えました。木と布の切り込み部分には、グリーンの蚊屋。一番のポイントはお地蔵様の「前垂れ」。錦紗縮緬です。この赤からはエネルギーを感じます。

　お地蔵様は、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の六道の世界のすべての人々を救済するよう願って祀られたといわれています。京都には「地蔵めぐり」という風習があり、伏見地蔵・鳥羽地蔵・桂地蔵・常盤地蔵・鞍馬地蔵・山科地蔵の６地蔵をめぐり、家内安全や無病息災、商売繁盛などを祈願する人が絶えません。皆さんも一度、歩いてみませんか。ちなみに、「仏谷」の作品には、偶然ですが、無意識のうちに６体のお地蔵様を描いていました。