和布ものがたり
消える洋服地屋さん
私はテキスタイルの仕事を13年間していたので、洋服のプリント地もよく使います。洋服生地専門店の「ノムラテーラー」(四条通麩屋町東入ル)では、数年前から和装の生地「金襴(きんらん)」が並んでいます。上京の西陣地域で織られたものですが、昔の金襴に比べると、色も現代的になり、皮と組み合わせるなどで海外の観光客向けの和小物として喜ばれているようです。原画は俵屋宗達、デザイン性は時空も飛び越えるのでしょうか。
今回紹介するのは、金襴専門店「伴戸」(堀川通今出川下ル)の風神・雷神の生地を使った手提げボストンバッグ。土台の帆布地に風神・雷神の柄をメーンに使い、エネルギッシュな作品に仕上げました。紬や綿の着物地をパッチワークで入れた手仕事ならではの風合いがあります。
仕事がら、ノムラテーラーにはよく行くのですが、オーダーメイドの洋服作りをしている方の高年齢化が気になります。手軽に縫えるホームウエアや子ども服用の綿生地の種類は増えていますが、レベルの高い洋服地の仕事をする方が減り、技術の継承の空洞化を感じます。商店街でも洋服地の布を扱う店が少なくなりました。北区でも古い店が閉店、薬局、コンビニ、100円パークに代わっています。
「ものづくり」は楽しいです。布と語り合いながら、オリジナリティのある作品ができた時は最高の気分です。もっと布大好きな人間が増えればうれしいですね。(アトリエのぶ 内田信子)