チャンピオン対決 南アが圧倒
08テストマッチ・南アフリカ―ウェールズ(6月7日、南アフリカ・ブルームフォンテーン)
07年W杯を制した南アフリカ。一方W杯予選リーグ敗退のショックから立ち直り、シックスネイションズ(欧州6カ国対抗戦)でグランドスラム(全勝優勝)を達成したウェールズ。世界チャンピオンに北半球のチャンピオンが挑戦するという注目の対戦となった。 序盤は共にキックを多用し、地域の取り合い。ラインアウト、スクラムで南アの強力フォワードが安定感を見せつけ優位にたつ。さらにブレイクダウン(ボール争奪戦)でも南アが圧力をかけ、ウェールズの持ち味である素早い攻撃を完全に封じ、ペナルティーを誘う。6分、10分とSOブッチ・ジェームスのPGでリード。一方ウェールズはSOスティーブン・ジョーンズがPG1本を返すも、18分、23分にまたPGを返され徐々に差が開く。
前半30分、ウェールズボールのラインアウトを身長208センチ、体重120キロの南アLOアンドレアス・ベッカーが奪い展開。FLルーク・ワトソン、HOジョン・スミット、CTBエイドリアン・ジェイコブスらの見事な突破からFBコンラード・ヤンティースがトライ。一方的なムードが漂い始める。
ウェールズも次第に攻撃が続くようにうなるも最後にミスが出る歯がゆい展開に。しかしペナルティーを得て、173センチながら世界屈指のWTBシェーン・ウィリアムズが速攻を仕掛け、右に左に大きく展開して一気にトライ。初めてウェールズらしさをみせた。
しかし南アもすぐに取り返し、22-10で前半終了。
後半、相変わらずウェールズの反応は鈍く、常に後手にまわる。そして46分、南アフリカは世界最高のLOヴィクター・マットフィールドを投入。直後にキャプテンのスミットが相手ボールのモールからボールをもぎ取り、トライにつなげる。
さらに55分にもスミス、ワトソンらが見事なオフロードパスをつなぎ、100メートル10秒7の豪脚NO8ピエール・スピースのトライ。コンバージョンも決まり、36-10とし勝負を決定付ける。
ウェールズも何とか北半球チャンピオンの意地を見せ、66分にスクラムからのワイド展開で、ウィリアムズがトライ。しかし終わってみれば43-17という得点差以上に内容に差をつけた世界チャンピオン南アフリカの余裕の勝利となった。
南アは万能フットボーラー、ジュアン・スミスを筆頭に強く、確実なタックルで前へ出続け、さらに反アパルトヘイト闘士だった父を持つルーク・ワトソンがブレイクダウンでウェールズボールにからみ続け、ウェールズ本来のラグビーをさせなかった。
またスーパー14での試験的ルールの下でプレーしていた南アフリカのフォワードはフィットネスのレベルの違いを見せつけ、全ての局面でウェールズフォワードを圧倒した。
一方ウェールズは何をするにも反応が鈍く、最後に必ずミスをしてしまうふがいない試合に。しかし唯一、「小さな者には大きなスペースがある」という名言を口にしたシェーン・ウィリアムズが世界屈指のランニングスキルを披露した。
次週の第2戦、ウェールズがウィリアムズを生かせる展開になれば、可能性は…なくもない。