蔵元ぶろぐ
梅酒は城陽の“地酒”─城陽酒造
はじめまして、佐々木酒造さんからバトンを受け取りました、城陽酒造の島本と申します。私自身、10年おりました長崎から戻ってまいりましてまだ間もないのですが、城陽という町と当酒蔵について少し紹介をさせていただきたいと思います。
城陽という地は、山城盆地の南部、京都から五里、奈良から五里に位置し、昔から「五里五里のさと」と呼ばれておりました。古墳や遺跡も多く、交通の要衝として栄えていたことを感じることができます。
また、木津川という水の恵みがあり、寺田のイモやいちじく、お茶、府下最大を誇る青谷梅林の梅など食の産物も豊富です。
青谷梅林の起源ははっきりとはしておりませんが、鎌倉時代にはあったようで、後醍醐天皇の皇子宗良親王の歌に「心かよう綴喜の里の梅が香を 空にへだつる中垣ぞなき」とあります。また、江戸時代には当地区が淀藩領で、藩主が毎年、青谷川の南の大谷へ観梅に来ているという記録がございます。
現在、青谷地区東方の丘陵地およそ20ヘクタールに数万本の梅樹があり、毎年6月から7月にかけて約120~130トンの梅の実が収穫されています。
当蔵では、地下100mから汲み上げた水で、京都産の酒米を使用した清酒と、地元の青谷梅林で採れる梅の実にこだわった梅酒を造ってまいりました。
当蔵の梅酒に使用する梅の実は「城州白(じょうしゅうはく)」という品種で、大粒で果肉が厚く香りが高いのが特徴です。また、この城州白は、以前に植えてあった土地には何故か生育せず、接ぎ木でしか増やせず、実がなるのも他の品種よりやや遅く、6月下旬に熟します。
梅雨と書くだけあって、6月のその時期に雨が多いと実の太り具合が良く、逆に空梅雨だと、実が小ぶりになってしまいます。
昨年も地元JAを通じ約40件の梅生産農家に依頼し、収穫した完熟した梅の実を入荷したその日に洗い上げ、タンクに漬け込みます。洗い上げが不十分だとうぶ毛などが沈殿し、まろやかさを損なってしまいますので、ここは気が抜けないところです。その後約半年で梅の実を引き上げますが、約3年間熟成させ、ボトリングします。
この取り組みが今年4月、農林水産省と経済産業省で、農林水産業者と商工業者等が連携して、それぞれの技術や特徴等を活用している先進的な取組、全国農商工連携88選として京都では当蔵が選定されました。
地酒といいますとやはり清酒のイメージがございますが、地のもので造った酒、この青谷梅林の梅酒、これもひとつの地酒のありかたではないかと考えております。