004010_山宣と私
よみがえる遠き日〔1〕─井出美代
2007年5月16日 11:09
井出美代(山本宣治の二女)
人前での話下手口下手の私ですが、道づれに又お食事を供しながらどなたかに話していた想い出を書きとめておきたいと思います。
治子姉が歌集清明の季に詠んでおりましたように、その時の雰囲気はよく覚えておりますのに声というものには記憶がありません。当時の演説会での辯士中止の声や委員会や国会での質疑応答が再現されたらどうでしょう。日進月歩の今日の報道事情下は驚く外ありません。見聞き出来ないことによって書き残された書を読むインパクトのほうが強いと思われます。でも今は思いついたことをお話しましょうか。
ママが私たちにこんなことを話しました。
「パパがねこの間英ちゃん浩ちゃんの喧嘩して泣いてた声をこの箱の中の機械に閉じこめたんだよ、この把手をくるくるまわすと聞こえるからねといって把手(とって)をまわさはったけれどガラガラグチャグチャなるだけで何も聞こえなかったわ。」と。録音のさきがけを手がけたものの先ずは失敗という所でしょう。でもパパは機械いぢりが得意であの頃のラヂオは手造りでした。夜中に充電の箱がうなっていたことが思い出されます。