京都民報
なるほど京都

京の菓子暦

茶の湯と京文化に磨かれ、育まれた京の和菓子。四季折々の京の和菓子を紹介します。

甘楽花子 坤庵

蕨粉

 蕨にせよ、葛にせよ、古来からの日本人の知恵と努力には感心させられることが多くあります。どちらも地下澱粉といいますか、地下の根から取り出した澱粉を手間をかけて精製したものです。
 早春の一時期だけのお菓子に使われるものですが、喉越しの後にフッと鼻に抜ける香りに春の野趣を感じます。これを茶の菓子に取り入れた茶人の風味と季節に関する感覚の冴えにもまたまた感心します。
 上白糖と水を加え、火にかけて練っていきますと、葛の数層倍腰の強い半透明の生地に変わります。これにきめ細かく漉した漉し餡を包んで、黄な粉を細かくふるったものがお茶のお菓子「蕨餅」です。
 自生する蕨の減少と、精製に人手がかかりすぎることから年々天然の蕨粉は少なく、高価な原料になりつつあります。

  • 本蕨粉。葛と同じく地下澱粉で、中でも貴重なものです。一般では、他の澱粉を転用した化学蕨粉も使われています。
  • 本蕨粉、上白糖、水だけでつくります。

  • 本蕨粉を水で溶きます。
  • 手鍋に計量しておいた上白糖に合わせます。

  • 強火で一気に練り上げます。
  • 手鍋の周囲に付くようになったら中火に落とし、手早くまとめ上げます。

  • 練り上げていくと透明になります。そこで火を止め、湯煎にかけます。
  • 着色したものではありません。天然の蕨の色です。

  • とり粉は黄な粉。
  • 10

    生地を取り分けます。

  • 11

    蕨もちに餡をのせ、5本の指で右回りに回しながら餡玉を包んでいきます。
  • 12

    仕上げに黄な粉をふるいかけます。

  • 13

    黄な粉の香り、蕨と餡の小豆の香り、ツルンとした食感。春先の野趣のある味です。

完成

早蕨(さわらび)