/entertainment/00200_cinema_review/00203_/
レンブラントの夜警
オランダを代表するバロック絵画の巨匠、レンブラント。400年もの間、さまざまな賛辞でその才能を讃えられ、その名を知らないものはない彼の遺した数々の名画の中でも、オランダの至宝として門外不出とされ、“謎”が多いとも言われる名画「夜警」。美術家としても知られる鬼才ピーター・グリーナウェイが、その「夜警」の謎に大胆な解釈を加え、レンブラントの人生に迫った意欲作。
1642年、36歳にして一流の肖像画家としての地位を築き、その名声もヨーロッパ中に響いていたレンブラント。その才能を陰で支えていた画商の姪で妻のサスキアは、優れたビジネス手腕を発揮し莫大な富をも築いていた。また待望の男子を授かったレンブラントはまさに人生の絶頂期にいた。
ある時、アムステルダムの市警団の集団肖像画の制作を依頼されたレンブラントは、モデルの実像に迫るべく彼らに近づくが、そこには市民を守る英雄の姿はなく、堕落した薄汚いスキャンダルに満ちた世界があるばかりだった。レンブラントは彼らの「真の姿」を描くことによってそれを告発しようとするが、完成間近になった頃、産後の肥立ちが悪く床に臥していたサスキアが亡くなり失意のどん底に。やがて絵は完成し公開されるが、それによって輝かしいレンブラントの人生に暗い翳がしのび寄ることになる。
ピーター・グリーナウェイ監督は、彼が美術学校生だったころに、講義で語られるレンブラントへの賛辞に疑問を感じ嫌いだったそうです。でも、レンブラントの代名詞でもある「光と影」の世界は、暗闇に光をさしこむ「映画」と共通するものがある、レンブラントの影響力は無視できるものではなく検証の必要性も感じていた、とも語っています。その言葉どおり、ひとつひとつのシーンがまるで一枚の絵画をみて歩くような錯覚に陥り、暗闇の中から光によって浮かび上がってくる世界は、時に美しく、時に生々しく観る者に迫ってきます。現代の私たちは多くの場合、遺された絵画をみることでしかその作者に寄ることはできませんが、「レンブラントの夜警」は、「夜警」という絵画が彼の生きた時代、社会の中で生み出されたものであることをひしひしと感じ、レンブラントの息吹が伝わってくるような思いがします。(京都シネマ・横地由起子)
作品情報
- 出演:マーティン・フリーマン、エミリー・ホームズ、エヴァ・バーシッスル、ジョディ・メイほか
- 監督:ピーター・グリーナウェイ
- 脚本:ピーター・グリーナウェイ
- 音楽:ヴウォテック・パヴリク、ジョヴァンニ・ソリーマ
- 製作年:2007
- 製作国:カナダ・フランス・ドイツ・ポーランド・オランダ・イギリス合作
- 配給:東京テアトル
- 時間:139分
- ジャンル:劇映画
- 原題:Nightwatching
- 公開日:08/03/01
- →京都シネマの上映情報