ＣＬＵＢエンター

　『冬のソナタ』から巻き起こった“韓流ブーム”前夜、韓国映画がそれほどメジャーではなかった頃に日本国内で大ヒットを記録した『シュリ』。主演のハン・ソッキュは韓国トップクラスの人気俳優で、日本でもその実力は高く評価された。繊細でソフトなイメージの強いハン・ソッキュだが、この『ユゴ大統領有故』では辛辣でシニカルな主人公の一人を演じ、これまでのイメージを打ち破っている。
　韓国中央情報部（KCIA）のチュ儀典課長（ハン・ソッキュ）は彼の仕事の大半を占める大統領（ソン・ジェホ）のスキャンダルを尻拭いする雑務にうんざりしながらも、KCIAトップのキム部長（ペク・ヨンシク）の信任は厚く、そのジレンマに苛立つ毎日を過ごしている。一方キム部長は大統領の側近だが、権力闘争では押され気味なうえ、体調も思わしくなく精神的に不安定な日々。事件は1979年10月26日に起こる。ソウル市内KCIAの秘密施設「安家」で開かれていた大統領の晩餐会、その席を抜け出したキム部長はチュ儀典課長を呼び出し、今夜大統領を暗殺すると宣言する―。
　韓国の歴史上、最もショッキングな事件として今も鮮烈に人々の記憶に残る「10.26.大統領殺害事件」。イム・サンス監督は膨大な量の捜査記録、証言記録の資料を元に映画的な演出を加え、その緊迫した一日を鮮烈な映像美とともに描きだした。韓国ではパク大統領に関連する記録映像部分3分50秒間は黒く塗りつぶされての公開となったが、日本では無修正完全版での公開となる。（京都シネマ・赤染　芳）