/entertainment/00200_cinema_review/00201_/
潜水服は蝶の夢を見る
ある日突然自分の右手の自由がきかなくなる。そう、なんの前触れもなしに。そして耳が、次には口を動かすことすらも。体の機能がどんどんその働きをやめ、そのほとんどが停止してしまう。それは死ぬということとはたしてどう違うのだろう。…[ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)]無動言語症に類似して、無動、無言であるが、意識は鮮明であり、随意的な眼球運動や瞬目が保たれている状態。…健康で、体格が良く、知的な男性として社会の一員だったジャン・ドーは42歳の時に突然倒れる。目が覚めた時彼は身体的自由をすべて奪われている。そういった状況に立たされた時、僕たちはどう振る舞い、そして一体なにができるのだろう。絶望的な状況の中、ジャン・ドーには二つの武器が残されていた。想像力と記憶だ。生きるという最も困難な戦いの前に彼の唯一のよりどころとなるもの。もちろん言葉で言うほど簡単なものではまるでない。だけど彼はたくさんの人々の支えと、そして彼自身の本来持つ資質でそれを軽やかに飛び越えてゆく。たとえ身体は潜水服を着ているように鈍重で動かなくとも、蝶のように自由に羽ばたく彼の思考はその後、世界中で読み継がれる美しい自伝へと昇華したのだ。20万回の瞬きで綴った奇跡の実話を天才シュナーベル監督が溢れる映像美で描く、ほんとうの愛の感動作。
そして映画を観終わった後で僕はまた自問する。はたして僕は、僕たちは大きな悲劇に見舞われたとき、ジャン・ドーのように勇敢に自らの本質と向き合うことができるだろうか。
これは死や、病と対峙する僕たちすべての物語だ。(京都シネマ・タニグチマサキ)
そして映画を観終わった後で僕はまた自問する。はたして僕は、僕たちは大きな悲劇に見舞われたとき、ジャン・ドーのように勇敢に自らの本質と向き合うことができるだろうか。
これは死や、病と対峙する僕たちすべての物語だ。(京都シネマ・タニグチマサキ)
作品情報
- 出演:マチュー・アマルリック、エマニュエル・セニエ、マリナ・ハンズ
- 監督:ジュリアン・シュナーベル
- 脚本:ロナウド・ハーウッド
- 音楽:ポール・カンテロン
- 製作年:2007
- 製作国:フランス=アメリカ
- 配給:アスミック・エース
- 時間:112分
- ジャンル:ドラマ
- 原題:Le Scaphandre et le Papillon
- 公開日:08/02/16
- →京都シネマの上映情報